ツンとデレの間
「あれ?バニー、眼鏡替えた?」
虎徹はデスクワークに飽きたのか、隣に座るバーナビーをぼんやりと見つめていて
ふと気付いたように言った。
「え?…ああ、これですか。」
バーナビーは眼鏡を外し、見ていいというように虎徹に渡した。
「これはPC用です。最近忙しくてどうしてもデスクワークが溜まってしまうので。」
言われてみればごく薄く色が付いている。目に悪い光をカットするためらしい。
「へー、こんなのあるんだな。そういえばCMでやってるな。実物は初めて見た。」
もともと幾つも予備の眼鏡を持っているのは知っていたが、全部同じものだと思っていた。
虎徹が天井の照明に眼鏡をかざし見ながらそう言うと、バーナビーは肩をすくめて笑った。
「後は車の中には度を強めに入れたものを置いたり、ちょっとずつ変えてます。」
虎徹はふーんと不思議そうに唸って、手にしていた眼鏡をバーナビーに返した。
「でも、これちょっともったいない気もするな。」
「何がですか?」
バーナビーは眼鏡をかけながら、やっとはっきり見える虎徹を不思議そうに見つめた。
「レンズに色付いてるから、お前の綺麗な緑の瞳が見えにくいじゃん。」
バーナビーは白昼堂々、会社の中で妙に色っぽい台詞をぬけぬけと
言ってのけたこの先輩に、照れるやら腹が立つやら、
いろいろな感情がいっぺんに押し寄せた。
「んな…何言ってるんですか!」
白い頬にさあっと赤みが差したのは羞恥か怒りか。
「それはデスクワーク専用ですから。それをかけてよその人に会うことはありませんから。」
バーナビーは照れ隠しのようにぷいとPCのほうを向き直り、虎徹から目をそらした。
「そっかー。じゃあ俺って役得だな。」
「何がですか。」
またこっぱずかしいことを言い出す気がする。
でも、あえてそれを聞いてみたい気もする。
バーナビーが少し突き放したように言うのも気にせず、虎徹はのほほんと言い放った。
「だってそれって、『人に見せる用じゃないお前』を俺は見られるってことだろ?」
役得っつーか、眼福っつーか?
へらへらと嬉しそうに言う虎徹に、バーナビーは今度こそ顔を赤くしてキレ気味に言った。
「つまらないこと言ってないで仕事してください!今日も残業付き合うのはごめんですよ!!」
虎徹はへいへいと笑いながら自分の机に向かって肩で笑った。
<ほんと可愛くなったよなー、このウサギちゃん。>
終り