←TOP


Sex&Dance


「やっぱ、いつ見てもすげえな。ここの夜景は。」

虎徹は出窓状に開けた窓際に腰掛け、眼下に広がる(シュテ)(ルン)(ビルト)に目を細めた。

「僕も最近、やっとこの景色が綺麗だと思えるようになりました。」

バーナビーは虎徹のそばに立ち、彼に倣うように人工の星々を見つめる。

自宅の窓だというのに、以前と今とでは見える景色に対する感度が違う。

「僕は今まで一体何を見ていたんだろう。…何も見てなかったのかな。」

虎徹はどこか寂しげなバーナビーの表情に、やれやれと小さな息をつく。

こんな顔は今日という日には似つかわしくない。

「それだけ、わき目も振らず今まで頑張ってたってことだよ。」

そう言うと虎徹は自分の右隣をぽんぽんと叩いた。

促されるまま、バーナビーは静かにそこに腰を下ろした。

虎徹の肩に額を預け、彼の右手に自身の左手を重ねる。

「頑張ってる実感なんてなかった。ずっと、空っぽでした。この部屋みたいに。」

 

楽しいとか、嬉しいとか、何かをそういうふうに感じることに

いつしか罪悪感を抱くようになっていた。

それが独り生き残ったことへの代償のようにさえ思っていた。

バーナビーは静かにそう述懐した。

まして人を好きになるなんて、自分には分不相応なことなのだと。

 

「ここは、単に生きるためだけの場所でした…。」

だから、ここには何も置かなかった。

モノはいつか壊れる。

人はいつか自分の許からいなくなってしまう。

だったら、最初から何もないほうがいい。誰もいないほうがいい。

そう思っていました。

ついこの間までは。

 

空疎で、寂寞としたバーナビーの20年間。

それを思うと、虎徹は胸が締め付けられる。

失った時間を埋めてやることはできないが、せめて「今」を満たしてやりたい。

「もう、いいんだよ。もう我慢しなくていいんだ。」

虎徹はそう言ってバーナビーを抱きしめた。

「誰もいないほうがいいとか、寂しいこと言うなよ。」

バーナビーは虎徹の腕の中でくすっと小さく笑った。

「いやだな、僕言いましたよ?『この間までは』って。」

どこかの壊し屋さんが僕の価値観とかしがらみを木っ端みじんに

破壊して行ってくれましたからね。

そう言ってバーナビーは頭を虎徹の肩に預けたまま、

少しだけ顎をあげて彼を上目遣いで見上げた。

「おかげで、後に残ったのは寂しがりやで面倒くさい兎が一匹だけだ。」

バーナビーは嫣然と笑い、虎徹の頬を白い手で包んだ。

「ちゃんと、責任とって下さいね?

「しょうがねえなあ。オジサン加減知らねえから覚悟しろよ?

虎徹は男臭い笑みを浮かべ、バーナビーの唇を啄ばむように口づけた。

 

「ん…ふっ…。」

つつき合うようなバードキス。

しっとりとしたフレンチキス。

何度も何度もその感触を愉しむように、角度を変えて唇を重ね合う。

「…はぁ…。」

僅かに息を継ぐと、舌を絡めあい奪い合うように深いキスを交わす。

「バニー…。」

小さく耳元で囁いて、虎徹はバーナビーのシャツの裾に手を滑り込ませた。

「虎徹…さん…。」

耳朶を舐られ、熱っぽい大きな手で素肌を撫でまわされ、

バーナビーの思考が蕩けるように曖昧になる。

「もう、独りがいいなんて思わせないからな。」

熱い吐息交じりでそう言うと、虎徹は舌先をバーナビーの耳孔に挿しこんだ。

左腕でバーナビーの細い腰をしっかりと捉え、密着するように抱き寄せる。

「もう、独りは嫌です…。貴方がいないと…僕は…。」

バーナビーは愁派を帯びた翡翠の瞳を潤ませた。

「バニー、何も言わなくていい。もうお前は独りじゃないから。」

虎徹はそう言ってバーナビーの白い首筋に幾つもの紅い痕を刻む。

「ふ…あっ…。」

無遠慮にまくり上げ、露わになった胸の突起を指先で摘ままれ

バーナビーの喉から甘い声が零れた。

「これ、結構好きだろ?

虎徹は挑発するように耳元で言い、つんと勃ちあがった薄桃色の乳首を

捏ねまわし、爪の先で軽く引っ掻いた。

「やぁっ…。」

身体の芯から湧きあがる快感にバーナビーは喉を反らせた。

翠の瞳から理性の光が消え、唇から荒く甘い吐息が零れる。

官能に溺れ始めたその表情に、虎徹は劣情を激しく刺激された。

「そんなに感じちゃう?じゃあ、これだったら?

虎徹は片側の乳首に舌を這わせ、ねっとりと舐めあげた。

根元から吸い上げられ、歯を立てられて。

もう一方の乳首を右手で煽るように苛められて。

「あ、あっ…。」

感じやすいところを執拗に攻められ、

バーナビーは無意識に虎徹の黒髪を掻き抱いた。

「んっ…。そこぉ…。」

無意識のおねだりに気を良くして虎徹の舌がなおも胸を蹂躙する。

「ここだけじゃもの足りねえよなあ。」

挑発的に囁き、虎徹の手がベルトを緩めボトムの中に侵入した。

「ん…はぁっ…。」

これから来る快感を思い、バーナビーの腰が熱く疼いた。

 

「おお、反応いいねえ。やっぱり若いってすごいな。」

下着越しに硬くなったそれを愛撫され、指先でその形を辿られて。

からかうような物言いに、バーナビーの頬がさっと紅く染まる。

「ずるいです…。僕ばっかりこんなになって…。」

恥ずかしそうに顔をそむけるバーナビーに、虎徹は優しくキスした。

「おじさんになるとね、スロースターターなんだよ。」

でも覚悟しとけよ?

そう言うオッサンこそ、一度火がつくとしつけえんだから

そう耳打ちする間も虎徹の手は器用にバーナビーの腰を這いまわり、

身に着けていた衣服を綺麗に取り払ってしまった。

磨き上げられた大きな窓にバーナビーの裸身が美しく映し出される。

 

「や…!こんな所で…。外から見えちゃったら…。」

裸身を覆い隠すように身体を丸め、

バーナビーは抗議するように虎徹を軽く睨んだ。

「こんな高い場所、スカイハイでも飛んでこない限り誰にも見えねえよ。」

虎徹は遮るものの何もない高層階からの夜景を眺め、鷹揚に言った。

「飛んできたらどうするんですか。」

「んー。見せつけちゃおうか?

虎徹は軽口を叩きながら自分の衣服も脱ぎ捨てた。

「ここで二人で獣みたいに重なり合ってるとこ見られるの、想像してみな?

口の端だけで笑う虎徹が、いつにもまして男の匂いを漂わせる。

「人に見られるんですよ?

「想像したらコーフンしてこねえ?

虎に睨まれた兎のようにバーナビーは身を竦め動けない。

本物の兎と違うのは、この牙に掛かりたいという欲望。

「ほら、こっちは素直だよなー。バニーちゃん?

虎徹はバーナビーの膝を割り、彼の中心を大きな手で弄った。

快感に硬く勃ちあがったそれを、わざと緩くさする。

「あ、ああ…。だ、だめ!

「んー、こんなに良さそうなのに、ほんとにやめていいのかな?

試すように虎徹が言うと、バーナビーは頬を染めて逡巡している。

「バニー、おいで。気持ち良くしてあげるから。」

バーナビーは虎徹の優しい声に頭の芯が蕩けるのを感じた。

 

「バニー、そこから降りてここの縁に手をかけて。」

「こう…ですか?

バーナビーは窓際から降り、虎徹に背を向ける形で、

言われるがままに出窓の縁に手をかけた。

「で、こんな感じね。」

虎徹はそう言うとバーナビーの腰を取り、スッと後ろに引いた。

「な…!ちょっと、こんな恰好はずか…。」

出窓に手をかけ、虎徹に向かって尻を突き出す格好を取らされ、

バーナビーは抗議の声をあげかけたが、最後は言葉にならなかった。

「…ん、やぁっ。」

 

白く締まった双丘を手で割広げられ、その最奥に指が差し込まれたからだ。

「ほら、慣らさないと。後で死ぬほど痛いのはお前なんだぞ?

宥めるように言いながら、虎徹は慣れた手つきでその奥を蹂躙する。

ぬちぬちと粘膜の立てる音が淫靡に響く。

虎徹の荒く熱い息を腰に感じる。

「あ、ああっ…。」

淫らな姿態を虎徹が見ている。

それを思うだけで、恥ずかしさとそれを上回る興奮を覚える。

「ほら、もうちょっとだから。」

虎徹は優しくバーナビーの脚を愛撫し、羞恥に震える細腰に口づけた。

「虎徹さん…。」

バーナビーもなんとか受け入れようと身体の力を抜き、

腰を高く突きだし、自ら膝を大きく開いた。

「バニー、すげえ綺麗だよ。」

一生懸命に自分を受け入れようと痴態を甘受するバーナビーが

言いようもないほどいじらしくて、愛しくて。

虎徹は背後から抱きしめるようにバーナビーに覆いかぶさった。

硬くなった白い雄を手で包み、扱き、その筋を指で辿る。

「あ…や、あっ…。」

腰にあたる虎徹の硬い感触と、前を執拗に攻め立てる手の温もり。

この人と、一つになりたい。

切ない願いに、バーナビーの頬を涙が伝う。

「虎徹さん…。もう、だめ…。」

振り返り涙目で哀願すると、虎徹の琥珀の眼が優しく細められた。

「じゃあ、そろそろイキますか。」

自分の限界ももうすぐそこだった。

「早く…来てください…。」

甘く切ない声でねだられ、虎徹の雄が硬さを増した。

「じゃあ、可愛いバニーちゃんにワイルドに吠えてやりますか。」