Sex&Dance
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「…あ。」
ワイルドに吠えると言った傍から虎徹の動きが止まった。
「どうしたんですか?」
掠れた声でバーナビーが問うと、虎徹はバツが悪そうに頭を掻いた。
「ローションねえなと思って。取ってくるわ。寝室か?」
バーナビーは虎徹の腕を掴んで首を横に振った。
「そんなの、いいです…。このまま続けてください。」
こんな恰好で独りにされるほうがよっぽど苦痛だ。
バーナビーは先を促すように虎徹の首筋に抱きついた。
「バニー、女の子じゃねえんだからアレなしじゃ無理だって。」
虎徹はバーナビーの背を優しくさすって諭すように言った。
けれどバーナビーはいやいやと子供がぐずるようにさらに首を横に振る。
「大丈夫です。ちょっとくらい痛いのなんか我慢出来ます。」
いやいや、ちょっとじゃねえって。
絶対、気ぃ失うほど痛いから。
俺、お前の悲鳴でイケるほど変態さんじゃねえから。
虎徹はなんとかバーナビーを説得しようと、優しく頬を撫でる。
「俺、お前に怪我させたくねえから。すぐ戻るから、な?」
バーナビーはそれでも虎徹の首筋にきつく抱きついて離れようとしない。
無理に離れれば、せっかくのムードも台無しか。
「しょうがねえなあ。じゃあ、ちょっと我慢しろよ?」
虎徹はバーナビーをぎゅっと抱き返して耳元で囁くように訊ねた。
「ふ…あ、あ…。や、だめっ!!」
バーナビーは虎徹の舌が侵入するのを感じて身を捩った。
「ほら暴れないの。バニーが言ったんだぜ?痛いの我慢するって。」
虎徹はバーナビーの双丘を大きく手で割広げ、その奥を舌で凌辱する。
「だからって、そんなとこ舐めるなんて…!!汚いからやめてください!!」
「可愛いお前の身体なんだ。汚くなんかねえよ。」
虎徹は優しくそう言って、宥めるようにバーナビーの腰を愛撫した。
「虎徹…さん…。」
「こうしないと、後でお前が痛くて辛いだけだから。そんなの嫌なんだよ。」
虎徹は顔をあげ、バーナビーの髪を優しく梳いた。
「お前を痛めつけるようなことしたくねえんだよ。今日みたいな日は特に。」
だって、今日はお前の誕生日なんだから。
俺の欲望ばっかぶつけるんじゃなくて、お前がよくねえと意味ねえの。
せっかくだったら、いいセックスしたいじゃん。
とびっきりあったかくって気持ち良くって、幸せになれるようなさ。
この世に生まれてよかったなーって思えたら最高なんだけどな。
バーナビーは虎徹の言葉に胸が熱くなった。
この世に生まれてよかったなんて、
虎徹さんに出会うまで思ったこともなかった。
虎徹に出会って、初めて人の温もりを知った。
あなたになら、何をされてもいい。
あなたと一つになりたい。
「虎徹さん…。来て…ください。」
バーナビーが瞳を潤ませ、羞恥で僅かに顔を背けながら言った。
うつ伏せのまま腰を高くあげた痴態と、
それとは対照的に懸命に恥ずかしさに耐える表情があまりにも扇情的で、
虎徹の理性を消し去るには十分すぎた。
「バニー。」
虎徹はやや性急に己の猛る陰茎をバーナビーの後孔に宛がった。
「んっ…あ、ああっ!!」
十分に潤っていないそこを一気に貫かれ、バーナビーは苦しげに啼いた。
「く…はぁっ…。」
なんとか受け入れようと、膝を広く開き力を抜こうとする。
けれど想像以上の痛みで、喉から迸るのは呻くような声ばかり。
「…くうっ…。」
「バニー、やっぱ無理だろ。やり直そう。」
虎徹はバーナビーの苦しむ様にいたたまれず動きを止めた。
バーナビーはそれでも首を横に振った。
「このまま貴方と…一つに…。お願い…です。」
頑迷ともいえる一途な彼に、虎徹はどうしたものかと逡巡した。
このまま続ければ、バーナビーの身体を痛めてしまう。
だが今無理に中断すれば、たぶん心をもっと傷つける。
「くそ…。どうしても無理だったら言えよっ!!」
虎徹は開き直った。
一方の手でバーナビーの雄を弄り、扱くように撫で上げる。
苦痛を上回る快感で麻痺させよう。
虎徹の結論はそれだった。
「バニー、俺の全部やるから受け取れよ。」
後ろから激しく突きあげ、中の壁という壁に己を擦りつける。
その間も、前を優しく時にねっとりと絡みつくように攻め上げる。
「ん、あ、ああっ…。はぁ…ん…。」
バーナビーの漏らす声が熱を帯びた吐息交じりに変わった。
「虎徹…さん…。そこぉ…。」
快楽に溺れはじめたバーナビーの姿態がなまめかしさを増していく。
「バニーちゃん、すげえ色っぽいぜ…。」
「ふ…あ、ああっ。」
無意識に腰をグラインドし、
バーナビーの中が虎徹のそれに吸い付くように間欠的な圧をかける。
「うっ…く…。バニー、ちょっと締めすぎ…。」
虎徹は何度も激しく腰をぶつけるように突きあげた。
互いの迸る体液が湿った音を静かな部屋に響かせる。
「虎徹さん、僕…もう…。」
「俺も…。行くぜバニー。」
バーナビーは顔を伏せたまま頷いた。
「行きましょう、虎徹さん…。」
今のは懐かしい『行きますよ、オジサン』のアレンジかな。
虎徹はそんなことを頭のどこかで考えながら、
愛しい人の身体に己の楔を深々と突きさした。
「うああっ!」
「ふ…あ、ああっ!!」
同時に感じるエクスタシーは独りで勝手に感じるそれの何倍も強烈で。
バーナビーは快感と幸福感で気が遠くなるのを感じた。
「虎徹さん…好き、です…。」
バーナビーは掠れた小さな声でそう言って、涙が眦から流れた。
「俺も、お前を愛してるよ…。」
虎徹はバーナビーの身体を抱え起こし、強く抱きしめて囁いた。
「ん…。」
目が覚めた時、バーナビーは自分がどこにいるのかすぐに理解できなかった。
バーナビーはリビングの椅子に寝かされ、
素肌に寝室から持ってきたらしい毛布が肩まで掛けられていた。
「虎徹…さん?」
バーナビーは姿の見えない恋人を良く見えない目で捜した。
ふと何かが光っているのに気付き、壁のモニターを見た。
PCが起動していて、何かテキストが表示されているようだ。
バーナビーはサイドテーブルに眼鏡が置かれているのに気付き、
それを掛けてもう一度モニターを見た。
<Happy Birthday Barnaby!>
壁一面に投影されたメッセージにバーナビーは目を丸くした。
PCの苦手な虎徹は文字に装飾を施す方法が分からなかったらしく、
フォントを大きくして色をピンクにしただけの簡素なメッセージ。
それでもバーナビーの胸を打つには十分だった。
「虎徹さん…。」
「あ、バニーもう起きたのか。」
虎徹はカップの二つ乗った盆をサイドテーブルに置き、
バーナビーの顔を心配そうにのぞきこんだ。
「大丈夫か?どっか身体痛くないか?」
バーナビーは少し頬を染め、小さく頭を振った。
「大丈夫です。昨日は無理言って済みません…。」
虎徹はそんなバーナビーの様子に破顔して、彼の柔らかな髪を撫でた。
「バニーちゃんが色っぽすぎて、俺も無茶しちまった。悪かったな。」
虎徹はそう言って、持ってきたカップの一つを渡した。
「あの、虎徹さん。あれ…。」
バーナビーはモニターの文字に目を遣った。
「あ、勝手にPC借りて悪かった。テキストソフト以外触ってねえから。」
虎徹の謝罪にバーナビーはそうじゃないと慌てて言葉をつないだ。
「すごく嬉しいです。ありがとうございます。」
人からこんなふうにしてもらうのが、こんなに嬉しいなんて
初めて知りましたとバーナビーがはにかんで言った。
起きぬけの小さなサプライズを気にいってもらえたと知って、
虎徹は照れ臭そうに笑った。
「誕生日おめでとう、バーナビー。これからも一緒にいてくれよな。」
バーナビーはその言葉に眦を潤ませた。
「もちろんです。僕はあなたのバディですから。」
終り