「…聞き間違い、じゃないよな。今『抱いてください』って言ったか?」
虎徹は思いもよらないバーナビーの言葉に耳を疑った。
「言いました…。ダメ…ですか?」
頬を真っ赤にして俯くバーナビーに、虎徹の心拍数が一気に上昇した。
「お前…それで、いいのか?本気で言ってるんだな?」
虎徹がバーナビーの真意を図りかねて窺うように顔を覗くと、
バーナビーは意を決したように虎徹を見つめた。
「僕に…教えてください。『自分を大事にする』ことができるように…。」
静まり返った部屋に、荒い息遣いが艶めかしく響く。
「ん…あ、やぁっ…。」
首筋をきつく吸われ、バーナビーは白い喉を反らせた。
色素の薄い肌はすぐに鬱血し、赤い花弁のような痕を散らす。
「バニー、止めてほしかったらすぐ言えよ?」
そう言いながらも、虎徹は耳孔に舌を差し込み柔らかな耳朶を甘噛みした。
その手に滑らかな肌をしっとりと吸い付かせ、愛撫しながら。
「だ、だいじょう…。ん…あっ」
「へへっ、早くも弱点見つけちゃった。可愛いなお前。」
虎徹は薄桃色の突起をくりくりと弄んだ。
柔らかだったそこは、虎徹の指に翻弄されすぐに硬く立ちあがる。
「バニー、これ気持ちいいんじゃねえ?」
虎徹は片側の乳首をくにくにと指で押したり転がしたりしながら、
もう一方のそれを口に含んだ。
「あ…ああっ…。やだ…そこっ…。」
びくんと背を反らせ、バーナビーの声が甘く上擦る。
感じる顔を見られるのが恥ずかしいのか、バーナビーは右の前腕で顔を覆った。
しかしもう一方の腕が『もっと』というように虎徹の頭をかき抱く。
「やだ、じゃなくてもっと、だろ?」
虎徹はねっとりと乳首を舐め上げ、軽く歯を立てた。
その間も大きな手でバーナビーの引き締まった体の稜線を絶え間なく撫でまわす。
「あ、ああっ…。」
内腿を膝から上に向かって撫で上げられ、鼠頸部で寸止めする焦らすような愛撫に、
バーナビーはびくびくと敏感に震えて虎徹の劣情を激しく刺激する。
「バニー、すげえ感度良すぎてオジサン燃えてきちゃった。」
虎徹はまさか男を抱いて興奮する日がこようとはと自分でも驚いた。
虎徹の雄はとっくに硬く屹立している。
「綺麗だぜ、バニー…。」
決して華奢ではないバーナビーの姿態はあまりに美しく扇情的過ぎた。
汗に濡れる白い肌、枕に乱れ散る黄金色の細い髪。
虚ろに濡れる翡翠の瞳が虎徹を甘く幻惑する。
もっと乱れさせてみたい。
きっと、この裸身はどれだけ淫乱にその身を解放しようとも美しいに違いない。
「すっげ、俺マジでコーフンしてきた…。」
虎徹は既に屹立していたバーナビーの白い雄を大きな手で包みこんだ。
先端から零れ出る蜜を指で掬い、そのまま鈴口を指でなぞる。
「ひぁ…!あ…そこ動かさないで…。や、やだっ…。」
涙目で制止するバーナビーに、虎徹は慌てて手を止めバーナビーを抱きしめた。
つい調子に乗って肉を貪るように触ってしまった。
けれど、それではバーナビーが肝心の課題を学習できない。
今夜は兎に襲いかかる虎であってはならない。
虎徹は気持ちを切り替えるように、バーナビーの唇に優しいキスを落とした。
「バニー…好きだよ…。だから、お前の全部を俺にくれ。」
虎徹の囁きに、バーナビーは一瞬戸惑ったがじきに頷いた。
「はい…。虎徹さんになら…。」
一途で真っ直ぐな瞳が虎徹の胸を射抜く。
この身体を知らない奴になど披いてほしくない。
この心を知らない奴になど穢されたくない。
どうか、自分をもっと大切にすることを覚えてほしい。
「いい子だ。大丈夫、すぐ気持ち良くなるから。」
虎徹はもう一度微かなキスをすると、ゆっくりとバーナビーの芯を愛撫した。
緩急をつけて、慈しむように、愛おしげに。
「ん…あ、あ…。もう、だめ…。」
バーナビーの中で、せりあがる快感が理性と羞恥を凌駕する。
「あ…ああっ!や、ああ!!」
膨張した先端からそれが迸ったのを感じて、羞恥と快感にバーナビーは
悦楽の涙を流した。
「バニー、この先…続けても大丈夫か?」
虎徹はバーナビーの頬を伝う涙を舐め上げ、そっと耳元に囁いた。
この先はどうしてもバーナビーに多少の苦痛を与えてしまう。
バーナビーがもし恐怖や屈辱を感じるようであれば、ここが最後の止め時だ。
虎徹はそう思ったが、バーナビーは頬を上気させ潤んだ目で見つめ返してきた。
「大丈夫です…。虎徹さん、僕に大切なこと…教えてください…。」
快楽と不安に震えながらもバーナビーは虎徹に全てを委ねるように、
両腕を虎徹の広い背に回した。
「あ…や…だめ、そこっ…。」
仰向けのまま膝を大きく開かれ、会陰をくちくちと慣らされて。
痛みを緩和するために前をねっとりと扱かれて。
バーナビーは恥ずかしさと痛みで涙が止まらない。
枕元にあったボディオイルをそこに塗りこまれ、差し込まれる指が
次第に増えていくのが分かる。
「だいぶ、慣れてきたな。バニー、大丈夫か?」
虎徹は二本の指を抜き差しし、中で交差したり内壁を引っ掻いて
バーナビーの身体を淫らに馴らしていく。
「だ…だめ…、あ…あっ…。」
「バニー、ここ慣らさないと死ぬほど痛いから。ちょっと我慢な。」
虎徹にそう言われ、涙目で素直に頷くバーナビーの表情は
痛々しくもある半面、扇情的で言いようもない色香を漂わせている。
ずっぷりと二本の指を咥えこんでなお余裕ができたのを見て、
虎徹はバーナビーの膝裏を自分の肩に引っかけた。
「バニー、挿れるぞ。」
「はい…。」
少し緊張した面持ちのバーナビーの頬をそっと撫で、虎徹はバーナビーの身体を貫いた。
「…ッ!や、ああっ!!」
悲鳴に近い嬌声を上げ、バーナビーは腰に打ち込まれる衝撃に必死で耐えた。
「バニ…。好きだ…愛してる…。」
虎徹は侵入者を排除せんと締めあげる痛みをこらえ、
繋がったままバーナビーをきつく抱きしめた。
「こて…さ…。」
掠れる声でバーナビーが応えた。
二つ折りにされた姿勢のまま、縋るように虎徹の腕を掴み涙目で見つめてくる。
「好き…です…。虎徹…さんが、好き…。」
その姿に虎徹は今までにないほどの、狂おしいまでの愛しさを感じた。
「ああ、俺もだ。バニー、愛してる。他の誰にも、お前は渡さねえ。」
もう抑制は効かなかった。
猛るものを細い腰にぶつけるように打ち込んだ。
バーナビーは懸命に耐えていたが、やがて慣れてきたのか自ら腰を動かし始めた。
その刺激が、虎徹を極限まで高めた。
「バニー…お前の中で、イってもいいか?」
虎徹に不意にそう聞かれ、バーナビーはふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「一緒に…だったら…。」
虎徹はその言葉に満足そうに頷いた。
「じゃあ、可愛いバニーちゃんと一緒に天国行っちゃいますか。」
「はい…。連れて行ってください…。」
幸福そうに微笑み、バーナビーは虎徹の背に両腕を絡めた。
虎徹が一層激しく貫き、二人は同時に絶頂を迎えた。
力尽きたように眠るバーナビーの髪を撫で、虎徹は何とも言えない充足感を覚えた。
こんなにも狂おしく人を想う気持ちが、自分の中にまだあったのだ。
とうに死に絶えたと思っていた熱情の名残が虎徹を心地よく酔わせる。
「ん…。」
バーナビーが微かに身じろぎし、ゆっくりと目を覚ました。
「大丈夫か、バニー。」
虎徹はバーナビーの乱れた髪を梳き、頬に張り付いた一筋の髪をとってやった。
「虎徹さん…。大丈夫…です。」
まだ少し眠そうな眼で少し気恥ずかしそうに笑うバーナビーは、
さっきの色香とは違いどこか幼ささえ感じさせた。
「その…少しは分かってくれたか?さっきの話…。」
虎徹はこれでもしだめだったらと不安なのか、いつになく語尾が頼りない。
バーナビーは束の間考えるように中空をぼんやりと眺め、ふっと息をついた。
「分かったかどうか…よく分かりません…。でも…。」
困惑したような顔の虎徹にバーナビーは困ったような笑みを浮かべた。
でも…これだけは分かりました。
僕は虎徹さんが好きです。
だから…他の人間には、この体を触られたくない。
この気持ちを、他の誰にも穢されたくない。
今わかるのは…それだけです。
虎徹は胸が熱くなって、バーナビーを抱きしめた。
「それでいい。それで十分だ。」
バーナビーはそれが本当に「自分を大切にする」ことなのか完全には分からなかった。
けれど、さっきまで考えていたようなことをすれば、
それが虎徹を激しく傷つけることは理解できた。
初めて自分を愛していると言ってくれた彼を傷つけたくはない。
バーナビーは名残惜しげに虎徹の抱擁を少し離し、真っ直ぐに彼の眼を見た。
「僕まだ完全に解ってないみたいです。だからまたご指導お願いします。虎徹先生。」
虎徹はこいつ、と嬉しそうにバーナビーの髪を荒っぽく撫で、優しくキスした。
終